制御不能の獣

 制御不能の獣


『先日のシャーレ爆破事件ですが、先生は重体ではありますが命に別状はありません』

『今はヴァルキューレ管轄の病院に入院中です。しかし、また狙われる危険性があります。ヴァルキューレに話は通してありますので、いくつかの学校で追加の警備をお願いします』

『その間、シャーレの業務は私のほうでこなします。手伝い?必要ありません』

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「それで?いつやり返すんです?能見ショウコ」


「…先生へのお見舞いはいいんですか?」


「あなたがヴァルキューレ管轄の病院に入院させたんでしょうに……!!」


「…そういえば指名手配されてましたね。先生が入院してるから騒ぎを起こすわけにもいかない、と」


「いけしゃあしゃあと……!」


「…話を戻しますが、今から行きましょうか。あなたが来るのを待っていたんです。私に出来なくて、あなたは出来ることがありますので」


「……は?」

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<クックックッ……シャーレを爆破したようですね>

「通信して確認することがそれか……期待外れだった……。どんな難敵かと思いきやまさか2つ目の方法で攻略出来ようとは……これでは何の経験も気づきもない……」

<そうでしょうね。何故なら貴方は選択を間違えた。先生は敵ではないというのに>

「またその話か。"先生"が仲間だなどと」

<クックックッ……そこから間違えているのです。キヴォトスのテクストは学園です。まさかその主人公が"先生"とお思いで?>

「……なに?」

<先生という役割がなくとも学園のテクストは守られます。しかし、学生がいなければ学園は存在しえないのです>

<だからこそ"先生"は私たちの仲間になり得たました。だが、あなたは主人公でも何でもない存在を敵として定めてしまった。あなたにとって本当の攻略すべき相手を見逃した>

<クックックッ……>

 ────

「……それで?まさか私の仕事はただの運転手だと?それもこんな障害物のないアビドス砂漠の」


「…はい。私も運転は出来ますがホバークラフトを運転出来るあなたほどの技術はありませんので」


「……私がいまあなたを撃たないのは、先生のを思ってのこと。報復するのに何の役にもたたないならうっかり引き金を引いてしまうかもしれません。能見ショウコ」


「それです。私たちは、先生からどう思われるかを考えてしまうと、途中で手を止めてしまうかもしれません」

「それに単に報復するだけなら各校選りすぐりの戦力で殴りつければいいんですよ」

「敵の居場所、やれそうなことは大体絞り切りましたし」


「……」


「…ですが、それでは納得出来ません。"先生"に手を出して、無事に帰られると?まさか」

「…各校の選りすぐりを集めたらその人たちからも止められるでしょう」

「…なので、そういうのとはまったく無関係の方法を使います。此処です、停めてください。エンジンは切らずに」


「私と二人で来た理由はわかりました。この周囲に敵がいることも。ですが、周りには砂しかありませんよ?」


「…目標が達成できそうなときや達成したとき、人は足元への注意を怠ります。先生を攻撃するという目標は成功です。砂漠横断鉄道という目標も目前です」

「ですが、キヴォトスの広い大地において何故砂漠横断鉄道がもっと前に完成していなかったのでしょうか?アビドスは元々トリニティやゲヘナと並ぶ三大校なのに」

「その答えがこの手榴弾でわかります」

 

「……この揺れは?」


「…発進してください。全速力であちらに。回避はお任せします。すぐに」

《BBBiIiinaaahhhhh!!!》

「来ますから」


「何なんですか!?アレ!?」


「…数十年前からいるよくわからないものです。これまでにも何度となく戦闘履歴があるのですが、正体の解明には至っていません。しかし、ハイランダーがここに鉄道を敷こうとした際、明らかに飛び抜けた頻度で襲撃を仕掛けてくるという事態があったようです」

「…頑張って逃げてくださいね?ビームに当たれば体の一部でも残ればいい、というほどですから。私の運転では避けられませんし」


「の、の、能見ショウコォォォオ!!!」

 ────

「つまり、小生の本当の敵はその『無彩』である、と?」

<クックックッ……生徒を利用し研究する私たちゲマトリアがそうするのを諦めた存在です。まさにあなたの言う難敵では?>

「そうか……!まだ攻略する相手がいたか……!ヒッヒッヒッ……!」

<クックックッ……ですが>

「小生は攻略を考える……!通信を切」

<もう遅いでしょうね>

<……預言者によって拠点ごと轢き潰しましたか。何も気づくことなく、何を経験したかもわからない。歴史に学べない身の限界でしょう……>

<クックックッ……>


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